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第25回 権藤誕生祭

土曜出勤を定時であがり、
帰宅後、私服からスーツに着替える。

親が不振そうな目で僕を見てくるが
特に何も言わず僕は三ノ宮に向かった。

結婚式の二次会?
いや、今日は権藤誕生祭なのだ。
そう、あの第25回 権藤誕生祭である。

 


 『権藤誕生祭』

 

って、なんやねんそれ!!


僕自身これが何のことかよくわからないので、
敢えて権藤の言葉を借りて説明させて頂こう。

「権藤誕生祭、それは権藤の権藤による権藤の為の誕生日会」BY権藤


・・・・


アホか! リーンカーンが生きてたら殴られるぞ!!

 

メールは3週間くらい前にやってきた。

 『人数足りないので来ていただけないでしょうか?』

そんな悲痛な叫びを聞いて、動じないほど僕は冷たい人間じゃない!!

普段は絶対に着ないスーツ、そして滅多に履かない靴、そしておNEWのメガネ。

三種の神器を見につけ、僕は『権藤誕生祭』に参加するため、三ノ宮に向かったのである。

 

誕生日際というからには、誕生日プレゼントくらい用意しなければならないのか?

仕事中にふと、その重大なことに気がついた僕は、色々と思案し、

権藤の好きであろうものを整理してみた。


1.小さい(男の子)

2.よく笑ってくれる(男の子)

3.フリーター(な男の子)


そうか! そいや、権藤はゲイだった!!


高校時代、ラグビー部に転部してきたときも

「遠くからラグビー部(の男の身体)見てて、ラグビーしたくなりました!」

と言っていたっけぇ。


若輩者の僕如きが権藤の趣向を満足させられるわけがなく、僕は結局、

東野圭吾の「ガリレオの苦悩」「聖女の救済」のハードカバー2冊を贈呈することにした。

今だから言うが、1回しか読んでいないハードカバーを人に譲るのは狂おしかった。

 

会場を確認していなかったので、元町周辺をぐるぐる歩き、時間ギリギリに到着。

会場を見渡すと、そこは

男、男、男、男、男、男、女、男、男、女、男、男・・・。


用意したプレゼントを渡すかどうか真剣に悩んだ瞬間であった。


ともあれ、会場のほとんどはラグビー部の後輩で埋め尽くされており、

数年ぶりに会う彼等からは昔のような甘ったれた雰囲気は漂っておらず、

むしろ立派な人間として社会に飛び立っているようであった。


イケダ:「宮内、最近どないよ!!」

宮内:「仕事見つからないんですよ。」

イケダ:「・・・そ、そうか。」

 

会場で流れるゆずのメロディーにあわせて、灰色のスーツをまとった権藤が登場!!

 「権ちゃーん!」 「権藤!!」 「えいじぃ!」

そんな黄色い声援が飛ぶわけもなく、会場からは、


「あかん、なんか見てるこっちが恥ずかしいわ!」

との声がチラホラ聞こえてきたが、それについては異論がないのが本音である。

 

会場を練り歩く権藤と固い握手を交わし、乾杯の合図を谷口が執り行う。

「僭越ながら、・・」

「僭越ながら、・・」

と使い慣れていない言葉の為、口に出す快感があったのか2度も繰り返す谷口。

そして僭越にもかかわらず、非常に長い乾杯の合図を終え、

盛大に権藤誕生祭が執り行われた。

 「かんぱーい!!」


思っていた以上に美味い飯。そして可愛い店員。男前な権藤。

こんな贅沢があっていいのか?いや、あってはいけない!いや、あってもいい!!


酒も進んだ。

何よりも久しぶりに出会う後輩達と話せて、個人的に既に満足なイケダ。

昔、ある後輩から

「イケダさんは、どーとでもなるでしょ!」

と完全に舐められた発言をされたものの、

なんだかんだで僕の存在を忘れられていなかったことに少し感動したのである。


そして始まる権藤クイズ。


ほら?

こういった阿呆なイベントでは阿呆に盛り上がるのが礼儀といった奴ではないでしょうか?

“さぁ、みんな阿呆になろう!!”

テンションをあげる為、リミッターを外し始めたイケダ。


・・・に反比例して、わりかしシャイな後輩達。。

いや、シャイというより大人な後輩達。


テンションが高かったのは、客観的にみても

イケダ → 谷口 → 杉本 の年長3人組みだった。

精神年齢が低い低いと言われ続けるのも納得の次第である。


否応なしに盛り上がる会場。

そして、構成・企画・司会・コメント、全部一人で行う主役の権藤。

権藤、光ってたぜ!!(汗が)


そして、誕生日らしく誕生日イベントが行われ、各々が誕生日プレゼントを渡し始めた。

後輩10人が出費しあって購入した時計。正直、あれは羨ましかった。

ピアスに本にと各々が考えたプレゼントを権藤に手渡すみんな。


みんなに愛されている権藤。愛している権藤。いや、愛されるよりも愛したい権藤。

なんと、まー、実に微笑ましい光景である。


余談だが、このとき僕の脳裏には、2009年度上半期流行語大賞確定の

「この幸せものー!」「それオレの台詞やー!」がコダマしていた。


谷口と杉本がそれぞれトリが良いと言っているので、さきにプレゼントを渡す僕。

「持ってたらゴメンよ。東野圭吾のガリレオシリーズの新しいの2冊です。」

おずおずと権藤にプレゼントするイケダ。

正直、まともに人にプレゼントするなんて、5年ぶりくらいである(涙)。


権藤:「あ、ぼくこれ知らないです!読んでないです!」


“良かったぁ!”権藤の台詞に僕はかなり安堵した。

が、次の権藤の台詞で安堵の感情は、心の奥深くに沈み込んだ。

 

「ぼく、東野圭吾さん好きなんすよ!」

突如、彼女の前でゲイ発言する権藤。

“そっか、年上の人でもいけるんだぁー。”

僕にできること、それは権藤を暖かく見守ってあげることなのかもしれない。。

 

気がつけば2時間が経過し、宴もたけなわ。

最後に後輩がギターを弾き、厳かに権藤誕生祭は幕を閉じたのであった。

 

ばらばらと会場を後にするみんな。

けど、僕等は主役の権藤を忘れていなかった。


後片付けして会場から出てくる権藤を外で待ち、

そしてラグビー部による『権藤上げ(胴上げ)』が道端で行われた。


「ごんどー!ごんどー!ごんどー!」

「ひゃー!マジ怖いっす!」

宙に浮きながら絶叫する権藤。

 

これほど身体のがっつりした男達に身体をモミクチャにされながら胴上げされる権藤の

笑顔は友情以上の、愛情という名の感情が見え隠れしていた。・・・ゲイだから。

 

そして僕は思った。


 「この幸せものーーー!!!」

 

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